弁護士コラム

障害者の雇用(非雇用)に問題はありませんか?

執筆者
弁護士 西村裕一

弁護士法人デイライト法律事務所 北九州オフィス所長、パートナー弁護士

保有資格 / 弁護士・入国管理局申請取次者

障害者雇用に関する現状と法制度

107572.png先日、障害者に対する偏見と無理解から凄惨な事件が起こり大きな社会問題となりましたが、雇用の場面においても、障害者への配慮が十分とはいえないのが現状です。

もっとも、平成28年4月、改正障害者雇用促進法及び障害者差別解消法の施行がなされており、企業として障害者雇用に関する検討が必須の時代になったといえるのではないでしょうか。

 

 

障害者雇用促進法

法定雇用率

障害者雇用促進法では、障害者の雇用を促進するため、民間企業に対し、常時雇用する従業員の一定割合(法定雇用率、民間企業は2%)以上の障害者の雇用を義務付けています。

 

障害者に対する差別の禁止

128202.jpg障害者雇用促進法では、雇用の分野における障害を理由とする差別的取扱いを禁止しています。

具体的には、障害者であることを理由に採用を拒否したり、賃金を引き下げたり、研修を受けさせなかったりといった例が挙げられます。

もっとも、不当な差別的取扱いは禁止されますが、職業能力等を適正に評価した結果といった合理的な理由による異なる取扱いが禁止されるものではありません。したがって、障害者について異なる取扱いを行うことが合理的といえるかの判断が重要になると考えられます。

合理的配慮の提供義務

障害者差別解消法では、事業分野を特定せず、包括的に事業者に対して合理的配慮を求めており、合理的配慮の提供は努力義務とされています。

他方で、障害者雇用促進法における合理的配慮の提供は法的義務とされていることに注意が必要です。

障害者差別解消法と異なる理由としては、雇用分野が障害者の自立や社会参加にとって極めて重要な分野であること、労働者と事業主とは雇用契約における継続的な関係にあるとともに、一般的に労働者は事業主の指揮命令下にあること等が挙げられます。

 

 

法定雇用率や障害者差別禁止、合理的配慮の提供義務に違反したら?

法定雇用率を達成していない場合には、厚生労働大臣による障害者雇入れ計画の作成命令、計画の適正実施の勧告が行われ、勧告に従わない場合には企業名が公表できるようになっており、実際に企業名を公表された企業も存在します。

また、障害者差別禁止、合理的配慮の提供義務に違反した場合においては、障害者である労働者が継続して勤務できることが重要であるという観点から、事業主に罰金等は課されていませんが、助言、指導及び勧告といった行政指導ができる旨規定されています。

 

 

どのような対策をとればよいの?

f9cb72f0a4c654bfa0aca9ca287fbfdf_s.jpg障害者の雇用(非雇用)に関し、企業としての責任をしっかりと果たせているかについては、法定雇用率の問題や障害者に対する合理的配慮義務を果たしているか等を検討する必要があります。

そして、そのような検討をする前提として、障害者の把握・確認が必要となりますが、その確認・把握にあたってはプライバシーへの配慮も忘れてはいけません。

また、障害者に対する他者との取扱いの差が不当な差別的取扱いにあたるのかといった判断や、合理的配慮の提供義務を果たしているといえるのかといった判断には、専門的な判断が必要となります。

そのため、障害者の雇用を考えている、またはすでに障害者の雇用をしているという経営者の方の中には、契約書の内容や会社の規定に差別的な問題はないか不安がある方、現在行っている合理的配慮の提供が障害者雇用促進法上の法的義務を充たすものなのか不安がある方もいらっしゃることかと思います。

今後、社会を挙げて障害者の雇用が進んでいく中で、障害者雇用に関する紛争の未然防止は企業にとって重要な課題であると考えます。

そのため、現在紛争が生じているという場合でなくても、少しでも障害者雇用に関し不安を抱えられている経営者の方は、是非一度弊所の弁護士にご相談ください。

 

 




  

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