弁護士コラム

2次会でのセクハラ行為で、会社に賠償責任

執筆者
弁護士 西村裕一

弁護士法人デイライト法律事務所 北九州オフィス所長、パートナー弁護士

保有資格 / 弁護士・入国管理局申請取次者

146882.jpg福岡地裁は、平成27年12月22日、自動車販売会社で派遣社員として働いていた女性が、2次会で男性社員からセクシュアル・ハラスメント(セクハラ)を受けたとして損害賠償請求をした事案で、セクハラ行為を認定したうえで、その男性とともに会社に損害賠償責任を認めました。

この事案では、新入社員歓迎会の2次会がスナックであり、その際、カラオケを歌っている女性の派遣社員の太ももを男性社員が抱え上げ、その女性のスカートがずり上がってしまったというものでした。

裁判所は、男性社員が「女性の承諾なく太ももに触れて持ち上げており、性的羞恥心を害する行為」であったと認定し、男性社員の行為をセクハラと判断しました。

また、勤務時間外、職場外で行われたため、会社も当該男性社員の責任を連帯して負うかが問題になりましたが、「勤務時間外・職場外ではあるが、新入社員歓迎会の2次会は職務と密接な関連があった」とし、会社にも損害賠償責任を認めました

今回、会社の負う損害賠償責任は、「使用者責任」(民法715条)と呼ばれるものです。

民法
第715条
1項 ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、・・・。

715条によると、「その事業の執行について」従業員が第三者に損害を与えた場合に、使用者責任が認められることになります。今回は、歓迎会の2次会の場でセクハラ行為が行われており、事業の執行についてといえるかが問題となりましたが、裁判所は職務との密接な関連を認めてこの要件をみたすと判断しました。

今回の事案以外にも、終業後、職場外での自由参加の飲み会の場で、上司が仕事の話を絡ませながら性的嫌がらせを繰り返したという事案で、上司としての立場を利用して行ったものであるとして、使用者責任を認めた例もあります(大坂地判平10.12.21)。
このように、自由参加の飲み会の場で行われた従業員のセクハラ行為であっても、使用者が責任を負うことがあります。

12月、1月は、特に忘年会、新年会などで飲み会が多数開催される時期です。
従業員同士の親睦を深めるために懇親会はとても重要な役割を果たしますが、その場でセクハラ行為が行われると、被害者が受ける精神的苦痛が多大なものとなることはもちろん、会社もセクハラが行われた会社として全国に報道されるなどして、取り返しのつかないことになります。
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今回の事件でも、被害者の女性は、事件後、めまいや嘔吐の症状が現れ、事件の翌月末に退職を余儀なくされてしまいました。また、事件が報道で取り上げられることで、会社も信用の低下を招いたことは間違いありません。
したがって、会社では、セクハラは絶対にやってはいけない行為であるということをトップのメッセージとして発信し、セクハラを未然に防ぐことが必要です。また、どのような行為がセクハラに当たるのかということを社内に周知したうえ、定期的にセクハラ研修などを行うことで、従業員のセクハラに対する意識を高める必要があります。

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