弁護士コラム

塩村議員のセクハラやじ事件を考える

執筆者
弁護士 西村裕一

弁護士法人デイライト法律事務所 北九州オフィス所長、パートナー弁護士

保有資格 / 弁護士・入国管理局申請取次者

国会のイメージイラスト今回は、先日、都議会で起こった“セクハラやじ”事件について、考えてみたいと思います。

“セクハラやじ事件”は、連日報道されていたとおり、東京都議会にて、妊娠や出産についての支援策について一般質問を行っていた女性都議に対し、複数の男性の声で、「早く結婚した方がいい」「産めないのか」などといったやじが飛ばされたものです。

1人の男性都議が「早く結婚した方がいい」と発言したことを認め謝罪して会派を離脱し、都議会で再発防止と信頼回復を目指す決議案が可決されたことで、事実上収束した形になっています。 女性都議に向けられたやじは、彼女自身はもちろん、結婚や出産を望んでいるのにかなわない女性や、結婚や出産について異なる価値観を有している女性など、多くの人を傷つけかねないものであり、冗談では済まされない問題です。

特にこの事件は、市民の投票で選ばれた都議会議員という、民主主義の根幹を担う人たちが、よりにもよって女性のための支援策を話し合っているなかで、あまりに配慮に欠ける発言をしたというものであり、決して許されるものではないと思います。

では、この女性都議に向けられた「早く結婚した方がいい」「産めないのか」という発言が、一般企業において行われた場合、どうなるのでしょうか。

まず、これらの発言は、「労働者の意に反する性的な言動」であり、受け手を「不快にさせるもの」として、セクハラにあたる可能性があります。

そして、被害者からの被害申告があり、事実調査の結果発言があったことが確認された場合には、発言をした人は、就業規則その他セクハラに関する規定等に基づき、減給や出勤停止などの懲戒処分や、配置転換等の措置を受けることになるでしょう。

悲しい女性のイメージ画像さらに、被害者が、発言の影響で、働く意欲を失ったり、心身の不調を生じたりして、退職を余儀なくされた場合には、加害者に対する損害賠償請求が認められる可能性もあります。また、会社も、セクハラ対策が不十分であったとして、被害者から損害賠償請求を受ける可能性があるでしょう。

このように、「セクハラやじ」は、行なわれた場所が企業であれば、発言者や企業は、重い責を負うことになるのです。

議会からも、社会からも、セクハラをなくすためには、ひとりひとりがセクハラ問題に対する正しい知識を身に着け、意識的に自らの価値観を顧みる必要があるといえます。

私も弁護士として、微力ながら、セクハラをなくすために努力して参りたいと思います。

 

 




  

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