弁護士コラム

就業時間の全面禁煙化は就業規則で定められる?

執筆者
弁護士 西村裕一

弁護士法人デイライト法律事務所 北九州オフィス所長、パートナー弁護士

保有資格 / 弁護士・入国管理局申請取次者

就業規則で喫煙について定められていたり、普段から労使間に喫煙に関する慣行がある職場では、全面禁煙化とすることは就業規則の不利益変更とみなされる可能性があります。

本記事では、就業時間中の全面禁煙化が企業に与える影響と、その是非について説明しています。

ぜひ参考になさってください。

就業時間の全面禁煙化の是非

全面禁煙化のメリット

全面禁煙化の目的は、「健康障害の防止」と「健康増進」になるでしょう。

喫煙者自身の健康はもちろんのこと、非喫煙者も受動喫煙による健康被害は喫煙者以上とも言われていますので、全面禁煙化とすることで全ての者の健康を守ることが目的となっているといえます。

そのほか、非喫煙者にとっては、タバコの煙(臭い)自体が嫌いな人も少なくありませんので、そのような人が仕事に集中する環境を作ることにもなります。

 

全面禁煙化の問題点

全面禁煙化の問題点

①幸福追求権に反するのでは?

喫煙することも、喫煙者の幸福追求権(憲法13条)の一つと考えることが出来ます。

もっとも、過去の判例でも、「喫煙の自由は、あらゆる時、所において保障されなければならないものではない」とされています。

他方で、会社側は従業員に対する安全配慮義務を負っていること、とりわけ平成15年の健康増進法の施行にともない、会社側には受動喫煙防止の努力義務が課せられていることなどからすると、従業員の健康を守るという目的のために喫煙を制限することを「憲法違反」ということは難しいでしょう。

 

②労働条件の不利益変更になるのでは?

喫煙について就業規則に定められていたり、また労使間に喫煙に関する慣行がある会社では、全面禁煙化とすることは就業規則の不利益変更に当たる可能性があります。

そのような場合には労働者の個別の同意をとるか、あるいは労働契約法10条の要件(注1)をみたす必要があります。

※注1:就業規則の変更は、労働者の受ける不利益の程度、労働条件の変更の必要性、変更後の就業規則の内容の相当性、労働組合等との交渉の状況その他の就業規則の変更に係る事情に照らして合理的なものでなければならないという要件です。

 

 

全面禁煙か、共存か

今日、喫煙者にとって、喫煙行為は単なる息抜きとして行われるだけでなく、コミュニケーションのツールの1つとなっていることも少なくありません。

また、禁煙を強いられることで仕事の集中力がかえってそがれてしまう人もいるでしょう。

喫煙を健康を害するもので「悪」であると決めつけてしまうことは簡単ですが、喫煙者、非喫煙者をまじえて禁煙化の是非について議論することで、全面禁煙化を含め、よりよい解決の方法が見つかるかもしれません。

 

 




  

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