弁護士コラム

従業員の不適切なSNS投稿への会社としての対応を弁護士が解説!

執筆者
弁護士 西村裕一

弁護士法人デイライト法律事務所 北九州オフィス所長、パートナー弁護士

保有資格 / 弁護士・入国管理局申請取次者

SNS利用者の増加

パソコンとスマホ昨今、SNSの利用率は右肩上がりに伸びています。

従業員のSNS利用については本来私的な行為であり、プライベートな領域にとどまるかぎりは会社の支配が及ぶものではありません。

しかしながら、従業員のSNS利用によって会社に損害が生じることがあります。

万一SNSに関するトラブルに巻き込まれた場合、会社はどのような対応をすればよいでしょうか。

(SNS利用率の推移について、詳しくは総務省HPをご覧下さい。)。

 

 

会社に発生し得る損害

社内情報をSNSに公開した場合

解雇のイメージ従業員が、顧客情報や新製品の開発情報等の社内情報をSNSで漏洩した場合、会社にはどのような損害が生じるでしょうか。

顧客情報を漏洩した場合、顧客から会社に対し損害賠償請求がされる可能性があります。また、新製品の開発情報が漏洩された場合には、競合他社がその情報を入手することにより会社に莫大な損失を与えることは想像に難くないでしょう。

加えて、会社の情報管理体制そのものに問題があった場合には、会社の信用度も著しく低下することになります。

 

会社のイメージを損なう写真や動画をSNSに投稿した場合

賃金台帳記憶に新しい事例で、コンビニの店員がアイスケースに入った写真をSNSに投稿したという事例があります。

このような場合、会社には、食材の廃棄、店舗の清掃・消毒・休業等にかかる費用が発生します。

また、店舗が特定されるようなことがあれば風評被害は避けられず、消費者の買い控えや取引先からの取引停止等により、売上げの低下ひいては閉店に追い込まれる可能性もあります。

 

SNSに会社を誹謗中傷するような投稿をする場合

悩む社員例えば、「最近忙しい。」、「転勤嫌だ。」程度の会社に対する不満の投稿は特に問題にはなりませんが、その程度や具体性によっては、会社イメージの低下を招く危険性があります。

また、特定人の個人名を挙げてこれを批判・侮辱するような場合には、社員同士のトラブルを招き業務に支障をきたすおそれもあります。

 

 

会社はどのような対応をすべき?~事後的な対応~

問題が発生した後にどのような対応をとるべきかは具体的事例ごとに異なりますが、概ね以下のような方法が考えられます。

従業員に対する投稿内容の削除要請

要請まずは、被害を最小限に抑えるために、従業員に対し問題となる投稿の削除要請をする必要があります。

SNSへの投稿自体は私生活上の行動であるため、根拠規定等がない限り業務命令として投稿の削除を命じることは困難です。そのため、従業員に任意に投稿内容を削除してもらう必要があります。

なお、従業員が任意に投稿内容を削除しない場合には、サイト管理者に対する削除請求を検討すべきでしょう。

(削除請求について、詳しくは弊所HPをご覧下さい。)

 

懲戒処分

懲戒処分を行うためには、まず、就業規則等の定める懲戒事由に該当しなければなりません。

また、仮に懲戒事由に該当する場合でも、「当該行為の性質・態様その他の事情に照らして社会通念上相当なものと認められない場合」(労契15条)には無効とされてしまいます。

そのため、問題を起こした従業員に対し懲戒処分が出来るか否かは個々の事例において個別に判断していくことになります。

 

刑事告訴

刑事告訴を検討する必要があるのは、主に、従業員がSNSに会社を誹謗中傷するような投稿をした場合と考えられます。

例えば、従業員が「〇〇会社は欠陥商品ばかりを売っている詐欺集団である。」といった過激な投稿をした場合に、会社は名誉毀損罪(刑法230条)で従業員を告訴することが考えられます。

(刑事告訴については、弊所の刑事弁護士へご相談を!)

 

従業員への損害賠償請求や求償権の行使

従業員のSNSへの投稿により会社が損害を被った場合、会社から従業員に対し、不法行為や債務不履行に基づく損害賠償請求をすることが考えられます。

また、情報の流出等で顧客から会社に対し損害賠償請求がなされ会社が損害金を支払った場合、会社は従業員に対し、会社が支払った損害金を従業員に請求すること(求償権の行使)も考えられます。

ただし、判例は「事業の性格、規模、施設の状況、被用者の業務の内容、労働条件、勤務態度、加害行為の態様、加害行為の予防若しくは損失の分散についての使用者の配慮の程度その他諸般の事情に照らし、損害の公平な分担という見地から信義則上相当と認められる限度において」のみ請求できるという考え方をとっており(最高裁51年7月8日判決)、会社から従業員に対する損害賠償請求や求償請求は制限される傾向にあることに注意が必要です。

 

 

事前に取るべき対策

SNSへの投稿によって発生した損害は回復困難なケースも多く、従業員に対する損害賠償請求等が制限的な傾向にあることも踏まえると、会社としては出来る限り事前の対策をとっておく必要があります。

SNS教育

パソコンを操作する女性SNS教育の第一の目的は、SNSトラブルを未然に防ぐという点にあります。

SNSトラブルは、従業員が意図的に会社に損害を与えるケースだけではなく、むしろ深く考えずに投稿をした結果、会社に損害を与えてしまったというケースが多いように思います。そのため、個々の従業員にSNSトラブルが与える影響についてよく理解してもらう必要があるでしょう。

また、SNS教育は、SNSトラブルが発生した場合に会社が従業員に対して懲戒処分を行うことが出来るか否かにも影響を及ぼします。

そのため、会社としては、定期的にSNS教育を実施することを検討すべきでしょう。

 

SNS利用に関する規定等の整備

従業員のSNS利用に関し、①誓約書、②就業規則、③ガイドライン等で会社の基本姿勢を明確にしておく必要があります。

特に、就業規則の服務規律と懲戒事由のそれぞれにSNS利用に関する定めを設けておくことにより、トラブルの軽重によっては問題従業員の懲戒処分を検討できる状況にしておくことが重要です。

なお、従業員にSNS利用の留意点を周知徹底するということを重視すると、規定等の整備のみならず上述のSNS教育を定期的に実施するのが望ましいと考えられます。

 

 

会社の対策は万全ですか?

相談SNSに関するトラブルにおいては、SNSで発信された情報は瞬時に全世界の不特定多数者に発信されてしまう点、第三者がデータを保存している場合には情報を完全に削除することは不可能であるという点に注意が必要です。

冒頭に述べたように、SNS利用者は増加傾向にあり、またSNS利用者は今や若者だけに止まりません。

SNSトラブルは明日にでも起こりうる身近な問題ですので、いざという時のSNSトラブル対策が万全か今一度ご確認ください。

弊所には、労務に強い弁護士及びIT弁護士が在籍しています。

SNSトラブルへの対策に不安を感じられている経営者の皆様は、是非一度弊所の弁護士までご相談ください。




  

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