下請会社の事故に関して元請会社はどのような責任を負いますか?


労災・安衛法についてよくある相談Q&A

質問弊社(元請、建設業)は、注文先から請け負った事業の一部を下請建設会社に任せていますが、先日、作業現場で転落事故が発生しました。

このような場合、元請である弊社は、どのような責任を負う可能性があるのですか?また、労基署はどのような対応をするのですか?

 

Answer

弁護士本村安宏安全配慮義務違反に基づく損害賠償責任を負う可能性があります。また、労働安全衛生法違反の疑いで、労基署により災害調査等の対象になる可能性があります。

 

元請と下請の関係

元請と下請とは本来独立の事業者ですが、時に元請の従業員が下請の従業員に対して、指揮監督を行う場合もあります。とはいえ業種によっては、複数の事業者が関与するため、安全衛生の責任の所在が不明確になることも少なくありません。

そして、場合によっては、下請で発生した事故等について、元請が安全配慮義務違反等の責任を負う場合もあります

請負関係

解説図

 

安全配慮義務

労働契約上の安全配慮義務とは、労働者が労務提供のため設置する場所、設備もしくは器具等を使用し又は使用者の指示のもとに労務を提供する過程において、労働者の生命及び身体等を危険から保護するよう配慮すべき義務をいいます(川義事件、最三小判昭59.4.10、民集38巻6号557頁)。

そして、元請と下請の関係であっても、元請業者の労働者と下請業者の労働者との間に、「実質的な使用関係」あるいは「間接的指揮命令関係」が認められれば、元請業者が下請業者の労働者に対して、安全配慮義務を負うと判断される可能性が高いといえます。

仮に安全配慮義務違反が認められた場合、元請業者も被害者に対する損害賠償責任を負う可能性があります以下の判例は、その可能性を示したものです。

造船所【三菱重工神戸造船所事件(最一小判平3.4.11 労判590号14頁、判時1391号3頁)

(事案の概要)

従業員らは、下請会社(元請会社は造船業者)の労働者として約20年間ハンマー打ち作業等に従事していた。その後、この従業員らが作業に伴う騒音により聴力障害に罹患し、これについて元請会社に対し安全配慮義務違反があるとして、損害賠償請求を行った事案。

(判旨抜粋)

「右認定事実によれば、上告人の下請企業の労働者が上告人のD造船所で労務の提供をするに当たっては、いわゆる社外工として、上告人の管理する設備、工具等を用い、事実上上告人の指揮、監督を受けて稼働し、その作業内容も上告人の従業員であるいわゆる本工とほとんど同じであったというのであり、このような事実関係の下においては、上告人は、下請企業の労働者との間に特別な社会的接触の関係に入ったもので、信義則上、右労働者に対し安全配慮義務を負うものであるとした原審の判断は、正当として是認することができる。

 

 

労働安全衛生法上の規制

安全衛生管理体制の整備

安全第一一定規模・業種の事業場においては、総括安全衛生管理者、安全管理者、安全衛生推進者等の安全衛生の各種責任者を選任する必要があります。

こうした安全衛生の各種責任者については、通常はそれぞれの会社が常時使用する労働者数等に応じて選任することになりますので、別々の会社である元請と下請とでは、一方が他方のために安全衛生の各種責任者を選任する必要はありません。

もっとも、同一の場所において、元請と下請との間など重層的な取引関係の下で事業を行う建設業と造船業(特定元方事業)の場合においては、安全衛生の各種責任者の選任について、それぞれに別個の選任義務が課されています。

元請・下請の安全衛生管理体制の整備

① 統括安全衛生責任者

→ 選任義務があるのは、元請側

② 元方安全管理者

→ 選任義務があるのは、元請側

③ 店社安全管理者

→ 選任義務があるのは、元請側

④ 安全衛生責任者

→ 選任義務があるのは、下請側

 

労働者の危険又は健康障害を防止するための措置

請負契約は、下請、孫請等の多重構造になることがしばしば見られ、どの事業者が労働安全衛生に関する責任を負うかが不明確になることもあります。

そのため、労働安全衛生法では、請負業者(元請・下請等)に対し、労働者の危険又は健康障害を防止するためのさまざまな義務を課しています。

例えば、元方事業者(元請業者)には、関係請負人やその労働者を指導し、労働安全衛生法等に違反しないよう、必要な指導を行う義務が課されています(安衛法第29条)。

また、建設業の元方事業者には、土砂等が崩壊するおそれのある場所、機械等が転倒するおそれのある場所等において、関係請負人の労働者が作業を行う際に、関係請負人が講ずべき危険防止の措置が適正に講ぜられるように、技術上の指導その他必要な措置を講ずる義務が課されています(安衛法第29条の2)。

特定元方事業者(建設業・造船業)に対しては、その労働者や関係請負人の労働者が同一の場所に存在することによって生じる労働災害を防止するために、協議組織の設置・運営、作業間の連絡調整、作業場所の巡視、関係請負人が行う安全衛生教育の指導・援助、仕事の工具及び機械・設置等に関する計画を策定する等の義務が課されています(安衛法第30条)。

資料のイメージイラスト

上記のとおり、さまざまな義務が課されているのは、主に元請業者です。元請業者としては、再度就業規則や上記労働安全衛生法上の義務を確認した上で、例えば、手すりの設置等、足りない部分を補う手段として、再度見直していくことが重要といえます。

 

 

労基署の対応

本設問の事例は、労災の可能性があるため、労基署による災害調査等の対象となる可能性があります。

災害調査は、労基署が一定の要件を満たす災害発生を知った段階で、ただちに実施される調査です。災害調査においては、現場状況、被災状況の確認、労働安全衛生法違反の有無の把握、二次災害防止のための指示等を実施します。

また、災害調査を実施するケースに該当しない労災の場合は、災害時監督を実施します。

労災問題について労基署対応が必要になることもあるかと思います。

当事務所では労基署対応も実施しておりますので、お悩みの方は是非ご相談ください。

プロの労働弁護士はここが違う!当事務所の労務顧問サポート

当事務所の企業法務部・労働事件チームは、企業の労務問題に関する様々なお悩みを解決するために、以下のサポートを行っています。

①専門チームによる無料相談サービス

当事務所では、弁護士の専門特化を第1の行動指針としています。

これは、多種多様な法律問題について、一人の弁護士が幅広く何でも対応するというスタンスでは、クライアントに対して十分なサービスが提供できないからです。

当事務所の労働事件チームは、労働法を注力分野とする弁護士のみで構成されており、労務問題について高度なリーガルサービスを提供しています。

また、安全配慮義務違反のように、刑事事件に発展する可能性がある場合、当事務所の刑事事件チームと連携し、一体となってサポートします。

安全配慮義務違反等の労働問題については、初回無料で法律相談を受け付けております。

 

②遠方の社労士・企業をサポート

労働問題や刑事事件を専門とする弁護士は決して多くありません。

当事務所の専門チームは、専門の弁護士がそばにいない企業をサポートするため、他県からのご依頼も受け付けております。

また、社労士の方からの相談も多く寄せられております。

遠方の相談者の場合、電話での相談も受け付けているので、お気軽にご相談ください。

 

③ソリューションを提供

表彰実績労働問題は、顕在化しているトラブルに対処することだけで解決とはなりません。

例えば、安全配慮義務違反を理由とする損害賠償請求であれば、示談交渉や裁判などで対処することが可能です。

しかし、より重要なのは、その問題発生の原因を特定し、課題を洗い出し、今後の再発防止に努めることです。

そのため、当事務所の労働事件チームは、例えば、雇用契約書や就業規則等の各種規定の診断や改訂等を行います。

また、人事制度の見直しや働き方の改革をもサポートしています。

そのため、当事務所では、単発での依頼よりも、継続的なサポート(顧問サービス)をご希望される企業や社労士の方が多い傾向です。

労働問題は複雑化する前の早期の対策が重要です。まずは当事務所の労働事件チームまで、お気軽にご相談ください。

ご相談の流れについてはこちらをごらんください。

 

 


「労災・安衛法」についてよくある相談

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