労災の休業補償とは?条件・期間・手続について【簡単!計算機付】

執筆者
弁護士 鈴木啓太

弁護士法人デイライト法律事務所 パートナー弁護士

保有資格 / 弁護士


労災の休業補償とは?

労災とは

労災とは、仕事や出退勤中の事故が原因となって、ケガをしたり、病気になったり、あるいは死亡することです。

仕事が原因となって発生した労災は業務災害といいます。

従業員が自宅と会社間の出退勤途中に事故などで、負傷したり死亡した場合は通勤災害といいます。

例えば、工場勤務の作業中に物を足下に落として骨折した場合には業務災害となります。

また、自家用車で会社から自宅に帰宅する途中に、他の車から衝突されてケガをしたような場合には通勤災害となります。

業務災害について詳しく確認されたい場合にはこちらをご覧ください。

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なお、労災は、正確には「労働災害」といいますが、一般的には簡略化して「労災」と呼ばれることが多いです。

 

 

休業補償とは?


休業補償とは、労働災害により負傷してしまい、働くことができず、会社から給料がもらえない場合に、給与の填補として労災保険から補償されるものです。

正確には、業務災害の場合には「休業補償給付」といい、通勤災害の場合には「休業給付」といいますが、このページでは、便宜上、全て休業補償と記載しています。

休業補償は給付基礎日額(詳しくは後述)の60%に相当する額が補償されます。

 

休業特別支給金

会社を休んで給料が支払われなかった場合、労災保険からは、休業補償に加えて、休業特別支給金が支給されます

休業特別支給金は給付基礎日額の20%に相当する額が補償されます。

空行特別支給金は損益相殺の対象となりませんので、休業損害の合計額から特別支給金は控除されません。

損益相殺とは、労災保険などから補償の支給を受けた場合には、その支給額分を賠償額から差し引くという考え方です。

具体例 休業損害として20万円の損害が発生した場合

休業損害として20万円の損害が発生しており、労災保険から休業補償として12万円特別支給金として4万円が支給されたとします。この場合、12万円+4万円=16万円はすでに補償されているので、休業損害として請求できるのは残りの4万円とも思われます。

しかし、特別支給金の4万円分は損益相殺の対象にはならず控除されないので、休業補償の12万円分だけを控除して、残りの8万円を会社や事故の加害者に請求できることになるのです。

※休業補償は給付基礎日額の60%、特別支給金は給付基礎日額の20%が補償されるので、上記の金額はあくまで目安の金額とお考えください。

 

休業補償を受ける条件

労災保険から休業補償が支給される条件は、以下の3つです。

  1. ① 休業から4日以上経過していること
  2. ② 労働災害による負傷や病気の療養をしていること
  3. ③ 労働不能であり賃金を受けとっていないこと
①休業から4日以上経過していること

労働災害により休業して1〜3日目は待機期間として労災保険の休業補償及び特別支給金を受け取ることはできません。

②労働災害によるケガや病気の療養をしていること

労災保険は、労働災害による損害を補償するものなので、従業員が労働災害を原因としてケガや病気の療養をしていることが条件となります。

③労働不能であり賃金を受けとっていないこと

労働が可能である場合や、賃金の支給を受けている場合には、労災保険によって補償する必要性はないため、労災保険から休業補償は支給されません。

 

労災ではその他にも様々な補償がある

休業補償の他に労災保険で支給されるものとしては、療養補償給付、障害補償給付、遺族補償給付、傷病補償給付、介護補償給付、葬祭料・葬祭給付などがあります。

療養補償給付

労働災害によって、負傷したり疾病にかかった場合には、治療費などが労災保険から支給されます

代表的な例としては、病院での入院費や診察代、薬代などが給付の内容となります。柔道整復師の施術(整骨院・接骨院)は、応急手当の場合を除き医師の同意を得た場合に行うことができるとされています(昭和31年11月6日基発754号)。

療養の給付を受けるためには、「療養補償給付たる療養の給付請求書(様式第5号)」を療養の給付を受けようとする指定医療機関を経由して所轄の労働基準監督署に提出することが必要です。

療養の費用の支給を受ける場合には、「療養補償給付たる療養の費用請求書(様式第7号(1))」の書式を利用します。

柔道整復師の施術費や、はり・きゅうの施術費に関しても別に書式があります。

療養の内容によって使用する様式が異なりますので、注意が必要です。

なお、各様式は、厚生労働省のホームページでダウンロードして使用することができます。

参考:厚生労働省|労災保険給付関係請求書等ダウンロードページ

 

 

障害補償給付

業務上の災害で負傷又は疾病にかかり、治った場合において、身体に障害が残存している場合には障害補償給付が支給されます

ここでいう「治った場合」とは、症状が安定し、それ以上の治療を行っても治療の余地がなくなった場合をいいます。

障害の程度は、労働基準法施行規則40条1項別表第2で定められています。

1級から14級まで定められており、1級が最も重い障害となっています。

1級から7級までに該当する場合は、障害補償年金が支給され、8級から14級の場合には障害補償一時金が支給されることになります。

障害補償年金は、給付基礎日額に給付日数を乗じた金額が支給されます。

支払いの始期・終期は傷病が治った日の属する月の翌月から始まり、その事由がなくなった日の属する月まで支給されます。

また、障害補償年金の支払は、毎年偶数月の6回に分割してそれぞれ前2ヶ月分が支払われます。

 

遺族補償給付


業務上の災害によって死亡した場合には、遺族には遺族補償給付が行われます

遺族補償給付には、遺族補償年金、遺族補償一時金があります。

遺族補償年金

遺族補償年金の受給権者は、配偶者、子、父母、孫、祖父母及び兄弟姉妹で労働者が死亡した当時その収入によって生計を維持していた者です。

ただし、夫、父母又は祖父母は60歳以上であること、子または孫については、18歳に達する日以後の最初の3月31日までの間にあること、兄弟姉妹については、18歳に達する日以後の最初の3月31日までにあること又は60歳以上であることが条件となっています。

もっとも、これらの条件に該当しない夫、子、父母、孫、祖父母または兄弟姉妹であっても、障害等級5級以上に該当する障害があるなど一定の障害がある場合には受給権が認められています。

遺族補償一時金

障害補償一時金は、①障害補償年金の受給権者がいない場合、あるいは、②遺族補償年金の受給権を有する者がその権利を失った場合で、他に遺族補償年金の受給権者がおらず、かつ、すでに支給された遺族補償年金の額及び遺族補償年金前払一時金の額の合計額が給付基礎日額に1000を乗じた金額に満たない場合に支給されます。

遺族補償一時金を受給できるのは、配偶者、子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹です。

 

傷病補償給付

傷病補償給付は、療養開始から1年6ヶ月経過した日以降において、①傷病が治っていないこと、②その傷病による障害の程度が傷病等級表の傷病等級に該当することの両方に当てはまる場合に給付されます。

傷病補償給付は、休業補償の代わって支給されるものであり、休業補償と二重取りできるわけではありません

 

介護補償給付

労働災害により介護が必要となった場合には介護補償の給付を受けることができます。

対象となるのは、以下に当てはまる方です。

  • 障害・傷病等級第1級の認定を受けている者
  • 第2級で精神神経・胸腹部臓器に障害を有する者

民間の介護サービスや親族などに、現に介護を受けていることが必要であり、病院や老人保健施設、障害者支援施設、特別養護老人ホームなどに入所している場合は支給の対象外です。

常時介護を要する場合には、17万1650円を上限として、実際に支出した金額が支給されます。

もっとも、親族などが介護しており、かつ、介護費用を支出していない場合あるいは支出した額が7万5290円を下回る場合には、一律に7万5290円が支給されます。

随時介護の場合、8万5780円を上限として、実際に支出した金額が支給されます。

もっとも、親族等により介護を受けており、かつ、介護費用を支出していない場合あるいは支出した額が3万7600円を下回る場合には、一律に3万7600円が支給されます。

 

葬祭料・葬祭給付

従業員が労働災害により死亡した場合には、以下の2つの金額を比べて小さい金額の方が支給額となります。

  1. ① 31万5000円+給付基礎日額の30日分
  2. ② 給付基礎日額の60日分

例えば、給付基礎日額が1万2000円の場合には、①は67万5000円、②は72万円となるため、①の67万5000円が支給額となります。

 

 

労災休業補償が支払われる期間は?

労災休業補償の待機期間

休業補償には、「待機期間」という期間があります。

休業開始1日目から3日目までは待機期間として休業補償は支給されません

1〜3日目は誰が負担する?

1〜3日目の休業補償の負担については、労働基準法76条に沿って考えることになります。

(休業補償)

第七十六条 労働者が前条の規定による療養のため、労働することができないために賃金を受けない場合においては、使用者は、労働者の療養中平均賃金の百分の六十の休業補償を行わなければならない。

第2項以下 略

引用元:労働基準法  e-Gov法令検索

条文の中の「前条の規定」とは療養補償の規定です。

業務を原因とする負傷や病気の療養のために、労働することができず、賃金の支払いを受けない場合については、「使用者」が平均賃金の60%の休業補償を支払わなければならないということです。

ここでいう使用者とは会社のことです。

つまり、休業1〜3日目の休業補償は会社が従業員に支払う必要があります

もっとも、会社が労働災害として認めていないような場合には、その支払いについて争いになることもありえます。

 

休業の初日はいつになる?

例えば、12月20日に仕事中にケガをして、そのまま病院に行って帰宅して、21日から会社を休んだ場合、待機期間の1日目は20日あるいは21日のいずれになるでしょうか。

答えは、20日です。20日が待機期間の1日目となります。

会社の所定労働時間の一部について労働できなかった場合には、その当日から休業日ということになるのです。

他方で、12月20日に仕事中にケガをしたけれども、そのまま仕事を続けて、所定労働時間の全てを働いた後に、病院に行って翌日21日から会社を休んだ場合には、21日が待機期間の1日目となります。

要するに、所定労働時間を働き切っているかどうかで初日が変わることになります。

 

休業補償はいつまで支払われるか?

上記のとおり、休業補償は、休業から4日目以降の休業分から支給されることになります。

では、いつまで支給を受けることができるのでしょうか。

この点、特定の期限は決まっておらず、支給期間の上限はありません

もっとも、労働することができるようになった場合や、労働災害によるケガや病気が治った場合には、支給は終了することになります。

 

休業補償の請求に時効はある?

労災保険の休業補償の請求は、請求をせずに放置していると時効により請求することができなくなります。

時効とは、ある期間が経過すると補償の請求権が消滅して請求することができなくなってしまう制度です。

休業補償の時効の期間は、2年間です。

長期間にわたって休業した後に、まとめて労災保険に請求しようとする場合には、時効により請求できなくなる可能性があるので注意しなければなりません。

 

 

労災休業補償の計算方法とは?

休業補償は「給付基礎日額」の60%、休業特別支給金は「給付基礎日額」の20%が1日単価として支給されます。

そこで、休業補償の計算にあたっては、まず「給付基礎日額」を算出する必要があります。

その後、休業日数をカウントして、給付基礎日額に休業日数を乗じることで休業補償の金額を算出します。

休業補償・特別支給金算出の流れ

①給付基礎日額の算出

給付基礎日額は、労働災害発生の直近3ヶ月の給料の総額をその3ヶ月の暦日数で除して算出します。

例えば、12月20日に労働災害が発生した場合には、まず11月、10月、9月の給料の総額を計算します。

ここでは、仮に月額25万円として、3ヶ月で合計75万円とします。

次に、その3ヶ月の暦日数をカウントします。

11月、10月、9月の暦日数は、91日(11月は30日、10月は31日、9月は30日)です。

このケースの場合の給付基礎日額は、以下の計算式のとおり、8242円となります。

75万円 ÷ 91日 = 8242円(1円未満切り上げ)

 

②休業日数のカウント

休業日数は、労働不能で労働できずに賃金の支払いを受けることができない期間の全ての日数をカウントします。

つまり、会社の所定休日(土日など)についても休業日数としてカウントします。

例えば、12月20日に労働災害が発生し、仕事中に救急車で搬送され、2月25日まで労働不能で賃金の支払いも受け取ることができず休業したとします。

この場合、12月20日から2月25日までの全ての日数が休業日となるため、休業日数は68日となります。

 

③具体的な金額の算出

休業補償の金額は以下の計算式で算出します。

給付基礎日額 × 60% × 休業日数

したがって、上記の例で計算すると、33万6273円が休業補償の支給額となります。

(計算式)
8242円 × 60% × 68日 = 33万6274円(1円未満切り上げ)

 

休業特別支給金の金額は以下の計算式で算出します。

給付基礎日額 × 20% × 休業日数

したがって、上記の例で計算すると、11万2092円が休業補償の支給額となります。

(計算式)
8242円 × 20% × 68日 = 11万2092円(1円未満切り上げ)

週3日の勤務の場合、休業日数はどのようにカウントする?
週3日のパート従業員の場合も、労働災害による負傷や病気の療養が必要で労働できず賃金の支払いを受けていない場合には、所定休日も含めて休業日としてカウントします。したがって、12月1日から31日まで上記の状態が続いた場合には、休業日数は31日となります。

 

計算機で休業補償を簡単に計算!

当事務所では、休業補償の概算額を素早く確認したいという方のために、オンラインで、かつ、無料で自動計算できるサービスをご提供しています。

休業補償自動計算ツール

計算機は休業補償を簡易迅速に把握するためのものであり、個別の状況には対応していませんので、正確な金額については労災問題に詳しい弁護士へ相談されてください。

 

 

休業補償を受けるための手続きの流れ

休業補償を受け取るための大まかな流れは以下のとおりです。

休業補償を受けるための手続きの流れ

①必要書類の収集と作成

休業補償の請求書は、所定の様式があります。

業務災害の休業補償の様式は「様式第8号」、通勤災害の場合は「様式第16号の6」となります。

参考:厚生労働省|労災保険給付関係請求書等ダウンロードページ

休業補償の振り込み口座などは、従業員が任意に口座を指定することができます。

労働災害の具体的な事実関係や賃金の金額などは会社の証明が必要となります。

療養のために労働することができないことについての医学的な証明は医師に証明してもらうことになります。

したがって、休業補償の請求書は、会社と病院に提出して必要事項を記載してもらう必要があります。

②労働基準監督署に書類を提出

必要書類が揃ったら、所轄の労働基準監督署に提出します。

③労働基準監督署による調査

請求書など書類一式が労働基準監督署に届いた後、調査が開始されます。

調査は、労働災害に当たるかどうかなど、休業補償の支給条件を満たしているかどうかが審査されます。

労働基準監督署に資料が届いてから調査が完了するまでには1ヶ月程度を要します(事案によって前後します)。

したがって、早期に休業補償の支給を受けたい場合には、速やかに労働基準監督署に請求することが大切です。

④休業補償の給付

調査の結果、労働災害として認定され休業補償の支給要件も満たしていると判断されれば、従業員が指定する口座に休業補償と休業特別支給金が振り込まれます。

調査の結果については、ハガキで通知が出されます。

その通知書を見れば、休業補償や休業特別支給金の具体的な金額を確認することができます

 

 

休業補償に関するQ&A

休業補償と傷病手当金との違いとは?

休業補償は、これまで説明してきたとおり、労災保険から支給される収入の減少に対する補償です。

他方で、傷病手当金とは、健康保険に加入している場合で、以下の要件を満たす場合に支給されるものです。

〜傷病手当金の要件〜

  1. ① 業務外の病気やケガで療養中であること
  2. ② 療養のために労働が不能であること
  3. ③ 4日以上仕事を休んでいること
  4. ④ 給料が支払われていないこと

①の要件から分かるとおり、労働災害によって休業している場合には傷病手当金は請求することができません。

つまり、休業補償と傷病手当金を二重取りすることはできないのです。

労働災害の場合は休業補償が支給され、労働災害以外が原因となるケガや病気による休業には傷病手当金が支給されることになります。

労働災害が原因の休業   → 休業補償
労働災害以外が原因の休業 → 傷病手当金

また、労災保険の休業補償は期間制限はありませんが、健康保険の傷病手当金は1年6ヶ月で終了します。

 

休業補償の期間に有給休暇を取得できる?

休業補償の期間に有給休暇を取得することはできます。

しかし、休業補償は給料の支払いを受けることができないときに支給されるものなので、給料が支給されることになる有給取得日については、休業補償は支給されません

休業補償と有給休暇の二重取りはできないのです。

休業補償を受けるのか、有給休暇を取得するのかは従業員が自由に選択することができます

休業補償は特別支給金を入れても給付基礎日額の80%の割合なのに対して、有給休暇の場合、100%の給料を受け取ることができますが、有給の日数を消化することになります。

いずれを選択するかは従業員の自由です。

 

休業補償期間中に解雇できる?

労働災害により休業補償を受けている従業員を会社は解雇することはできるでしょうか。

この点、労働基準法19条には以下のように規定されています。

(解雇制限)
第十九条 使用者は、労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかり療養のために休業する期間及びその後三十日間並びに産前産後の女性が第六十五条の規定によつて休業する期間及びその後三十日間は、解雇してはならない。ただし、使用者が、第八十一条の規定によつて打切補償を支払う場合又は天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となつた場合においては、この限りでない。
② 前項但書後段の場合においては、その事由について行政官庁の認定を受けなければならない。

引用元:労働基準法  e-Gov法令検索

労働基準法19条によれば、会社は、労働災害で休業している期間と休業期間が終了した後30日間は、当該従業員を解雇することができません

ただし、以下の例外もあります。

例外① 打切補償(労働基準法81条)
療養を開始して3年を超えても従業員のケガや病気が治らないときに、平均賃金の1200日分を支払うこと、あるいは、従業員が傷病補償年金の支給を受けている場合には解雇することができます。
例外② 天変事変その他やむ得ない事由のため事業の継続が不可能となった場合
天変事変で事業活動の継続が不可能になった場合には、所轄の労働基準監督署長の認定を受けることによって解雇ができます。

上記のような例外もありますが、稀なケースであり、原則として休業補償の支給期間に解雇することはできないと考えたほうがいいでしょう

 

退職後も休業補償をもらうことはできる?

労災保険の休業補償は、労働災害による負傷によって療養が必要となり、労働不能で賃金を受け取ることができない状態であれば支給されます。

したがって、従業員が会社を退職した場合、あるいは会社が倒産してなくなってしまったような場合でも休業補償の支給は継続して受けることができます

こうした考え方は、労働者災害補償保険法に根拠があります。

第12条の5 第1項

「保険給付を受ける権利は、労働者の退職によって変更されることはない。」

引用元:e-Gov法令 労働者災害補償保険法

条文の中の「保険給付を受ける権利」とは、休業補償や療養補償を受ける権利のことです。

なお、会社が倒産してしまって、休業補償の請求書の事業者証明(労働災害の事実や賃金などの証明)をしてもらえない場合には、所轄の労働基準監督署に理由を説明して請求します。

調査の結果問題がなければ休業補償が支給されます。

労働災害といえるか判断が難しい場合にも、会社が事業者証明をしない場合もありますが、こうした場合も所轄の労働基準監督署に理由を説明して請求をすることは可能です。

休業補償が支給されるかどうかは調査次第となります。

 

コロナの場合も休業補償をもらうことはできる?

コロナの場合でも、労働災害と認められれば休業補償は支給されます

厚生労働省の見解では、以下のようなケースでは労災保険の対象となるとされています。

  • 感染経路が業務によることが明らかな場合
  • 感染経路が不明の場合でも、感染リスクが高い業務に従事しそれにより感染した蓋然性 が強い場合
    「感染リスクが高い業務」の例
    ① 複数の感染者が確認された労働環境下での業務
    ② 顧客等との近接や接触の機会が多い労働環境下の業務
  • 医師・看護師や介護の業務に従事される方々については、業務外で感染したことが明ら かな場合を除いて原則として対象となる
  • 症状が持続し(罹患後症状があり)、療養等が必要と認められる場合も保険給付の対象 となる

 

 

まとめ

  • 労災保険の収入が減ることに対する補償としては、休業補償と休業特別支給金があり、休業補償は給付基礎日額の60%、休業特別支給金は給付基礎日額の20%が支給される。
  • 休業特別支給金は損益相殺されない。
  • 給付基礎日額の計算は、直近3ヶ月分の給料の合計をその3ヶ月の暦日数で除することで算出する。
  • 休業補償が支給されるのは、休業から4日目以降で、1〜3日目は待機期間として支給されないが、1〜3日目の休業補償は原則会社が負担する必要がある。
  • 労災保険には、休業補償の他に療養補償給付、障害補償給付、遺族補償給付、傷病補償給付、介護補償給付、葬祭料・葬祭給付などがある。
  • 休業補償に上限はないが、労働することができるようになった場合や、労働災害によるケガや病気が治った場合には、支給は終了する。
  • 休業補償は労災保険に基づくもので、傷病手当金は健康保険に基づくのであり、二重取りすることはできない。
  • 会社を退職したり、あるいは会社が倒産するなどした場合でも、それらが原因で休業補償の支給が停止されることはない。
  • コロナに感染したことによって会社を休んだ場合も、業務が原因で感染したといえれば、休業補償の対象となる。

労災事故は、お立場が従業員か会社かで、必要となるサポートが異なります。

デイライトでは、トップクラスのサービスを提供するため、それぞれの立場に応じた専門チーム(従業員側は人身障害部、会社側は企業法務部)がご対応します。

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労災・安衛法
   
執筆者
弁護士 鈴木啓太

弁護士法人デイライト法律事務所 パートナー弁護士

所属 / 福岡県弁護士会

保有資格 / 弁護士

専門領域 / 法人分野:労務問題 個人分野:人身障害事件  

実績紹介 / 福岡県屈指の弁護士数を誇るデイライト法律事務所のパートナー弁護士。労務問題に注力。企業向けに働き方改革等のセミナー講演活動を行う。「働き方改革実現の労務管理」「Q&Aユニオン・合同労組への法的対応の実務」等の書籍を執筆。



  

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