弁護士コラム

AIの影響と今後の労務管理のあり方


AIが及ぼす影響

近年、労働人口の減少を補填するものとして、人工知能(AI)の活用が注目されています。現時点において、「人間のように考えるコンピューター」としてのAIは実現されていませんが、「識別(音声認識や画像認識など)」「予測(数値予測やマッチングなど)」「実行(表現生成やデザインなど)」といった機能の一部が実用レベルに達し、生活や産業へのAIの導入がはじまっています。

また、今後、ディープラーニング(深層学習)によりAI活用の範囲はさらに広がる可能性が示唆されており、AIが雇用に与える影響についての研究等が話題となっています。

AI

例えば、野村総合研究所の研究では、10〜20年後に、日本の労働人口の約49パーセントが就いている職業においてAI等に代替することが可能との推計結果がニュースリリース(※)され、大きな話題を呼びました。
※野村総合研究所ニュースリリース(2015年12月02日)

現時点で、実際にどのような職業・職種がAIによって代替されるのか、正確に予測することはできませんが、少なくともAIの進化が近い将来、私達の雇用に及ぼす影響は大といえます。企業は長期的な経営戦略を立てる上で、AIの活用を考慮すべきだと考えます。

 

 

AIの影響を踏まえた労務管理

情報保護の徹底

AIが急速に進化しているのは、ディープラーニングによるものといわれています。ディープラーニングの技術に基づくAIの場合、ビッグデータの活用を伴うことも多く、取り扱うビッグデータの中には当然ながら、個人情報が含まれます。そのため、AIの活用にあたって、個人情報保護は特に重要な課題となります。

今後、企業がAIを活用するためには、個人情報保護法の規制を正しく理解し、適切な対応を取る必要があると考えます。

 

採用における留意点

前記のとおり、AIによって代替される職業・職種は非常に多いと想定されます。したがって、それを踏まえた採用業務を行うべきです。

例えば、「一般事務員」はAIによって代替されることが可能な職業と考えられています。したがって、現在一般事務員として採用しても、10年後、AIの方がコストが安ければ、会社にとって一般事務員は必要ではなくなります。

このような余剰人員が生じたとしても、現在の法律上、会社は簡単に労働者を解雇することができません。すなわち、解雇は、「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は」無効となります(労契法16条)。

質問 経営者このような事態に備えるために、対応策としては、2つ考えられます。

まず、正規労働者(期間の定めのない雇用契約)としては採用せず、いわゆる契約社員(雇用期間を半年間として、更新有りなど)として採用するという方法です。この採用形態であれば、当該職種が必要なくなった場合に、雇止めをすることで余剰人員を解消できます。

しかし、契約社員での採用は、正規労働者と比較して、優秀な人材を獲得できない可能性があります。また、契約社員の場合、無期転換申込権や雇止めが無効となる場合のリスクもあります。

内定

次に、採用する際、職種限定では採用しないという方法です。業務内容の変更の可能性がある前提で労働契約を締結しておけば、将来、業務内容を一般事務から他の業務に変更することが可能となります。

この場合、トラブル防止のために、雇用契約書の業務内容欄に「事務職とする。ただし、会社の都合で業務の内容を変更することがある。」などと明記しておくとよいでしょう。

 

デジタル化と教育訓練の見直し

かつて、米国でパソコンが急速に普及したとき、使える企業と、使えない企業が出て、技術倒産が生じたり、所得格差が広がった時期があったといわれています。

AIは急速に普及しており、近い将来、かつてのパソコンのように、使いこなせる企業とそうでない企業とに二分されると思われます。AIを使いこなせるようになるために、まずはデジタル化が急務です。

外国人日本はアメリカと比べると、デジタル化の普及が進んでいないといわれています。デジタル化が進んでいない企業は、まず下地としてのデジタル化の普及浸透が重要です。

また、企業においてAIが活用されるようになると、人材には、AIでは代替できない創造性やリーダーシップが求められるようになると思われます。したがって、従来の知識詰め込み型の教育訓練では十分ではなく、創造性やリーダーシップを開発できるような教育訓練が重要となるでしょう。

 

 


この記事を書いた人

弁護士 宮崎晃

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