弁護士コラム

正社員と非正規社員の交通費格差は違法?同一労働同一賃金の裁判例

執筆者
弁護士 西村裕一

弁護士法人デイライト法律事務所 北九州オフィス所長、パートナー弁護士

保有資格 / 弁護士・入国管理局申請取次者

通勤手当訴訟

平成30年2月1日、福岡地方裁判所小倉支部において、非正規社員の通勤手当が正社員の半額であったことが違法との判決がでました。

 

この判決は、非正規社員の通勤手当が、正規社員の通勤手当の半額である5000円であったところ、労働契約の不合理な格差を禁止した改正労働契約法施行時(平成25年4月)から平成25年10月に会社内部で正規社員と非正規社員の通勤手当がいずれも5000円となった時点までの期間の通勤手当の金額の格差が違法であるとして、非正規社員の損害賠償請求が認められた事案です。

この判決において、裁判官は、非正規社員と正規社員の「勤務形態に相違はなく、不合理な取扱いが長年継続され不法行為が成立する」と判断しました。

 

 

契約形態による労働条件の格差

人材近年、政府の「働き方改革」において、「同一労働同一賃金」の実施に向けたガイドライン案が提出されました。

「同一労働同一賃金」とは、同じ労働を行う労働者に対しては、その雇用形態にかかわらず同一の賃金を支払うべきであるとの考え方です。

現在、日本においてはこの考え方がそのまま採用されているわけではありませんが、無期労働契約の労働者と有期労働契約の労働者間の不合理な格差は禁止されています。

労働契約法20条は、「有期労働契約を締結している労働者の労働契約の内容である労働条件が、期間の定めがあることにより同一の使用者と期間の定めのない労働契約を締結している労働者の労働契約の内容である労働条件と相違する場合においては、当該労働条件の相違は、労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情を考慮して、不合理と認められるものであってはならない」としています。

すなわち、原則として労働契約が異なる労働者であっても、全く同じ労働(同一労働)をしている場合には同じ待遇が求められますが、「同じ労働」であるかの判断は、職務内容だけでなく、その労働者の責任の範囲や職務・配置転換の範囲等も考慮してなされるということです。

ポイントそのため、外面だけの労働で「同一労働」と判断されるわけではないことになります。

さらに、同法の施行通達は、「とりわけ、通勤手当、食堂の利用、安全管理などについて労働条件を相違させることは、職務の内容、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情を考慮して特段の理由がない限り合理的とは認められないと解される」とされています。

労働法20条は、賃金や労働時間などの基本的な労働条件だけでなく、それ以外の労働条件も規制の対象となります。

 

労働契約書の明確化を!

雇用契約書上述の判決は、労働契約法20条により、正規雇用者と非正規雇用者の労働条件を比較した上で、両者に格差を設けることが合理的か否かにより判断されたものと考えられます。

会社が労働者を雇用する際、ただ労働条件を記載した契約書を作成するだけでなく、各雇用形態に応じた労働契約書を作成することが必要となります。

特に、無期の雇用契約(主に正社員)と有期の雇用契約(主にパート・アルバイト)の場合は、雇用形態の違いによるトラブルを防止するため、労働契約書の内容として、①職務内容だけでなく、実態に即した②責任の範囲、③職務内容又は配置転換・転勤の範囲等の違いについても言及し、明確にすべきです。

労働契約に関する法律問題について、より詳しくお知りになりたい方は、当事務所の弁護士へお気軽にご相談ください。

働き方改革関連法案【同一労働同一賃金】

来月にも、同一労働同一賃金について盛り込んだ働き方改革関連法案が国会へ提出される予定です。

これにより、現在の労働契約法20条も修正が加えられる予定です。

具体的には、パートタイム労働法の改正によりパートタイム労働者と有期労働契約者に適用される規定が整備されます。

また、条文の文言に基本給その他の給与項目について、支給される目的や性質を考慮することも明記され、同一労働同一賃金の方向性をこれまで以上に明らかにする予定です。

デイライト法律事務所では、労働問題に注力する事務所として、今後も同一労働、同一賃金についての最新情報を経営者の皆様に発信していきます。

 

 

 




  

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