怪我のため出勤できない労働者の解雇は認められますか?

執筆者
弁護士 西村裕一

弁護士法人デイライト法律事務所 北九州オフィス所長、パートナー弁護士

保有資格 / 弁護士・入国管理局申請取次者


質問 経営者工場で作業していた労働者が怪我をし、出勤できなくなりました。会社としては、解雇して新たに人材を採用したいのですが、解雇は認められますか?

Answer

弁護士森内公彦イラスト療養のための休業期間とその後30日間は解雇が原則として禁止されています。

業務上災害の場合の解雇規制

労働基準法は、使用者は、労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかり療養のために休業する期間及びその後30日間(中略)は、解雇してはならないと規定しています(労基法19条1項柱書)。

本条は、労働者が業務上の負傷・疾病の場合の療養を安心して行うために使用者の解雇禁止を定めたものです。

ここでいう「業務上」とは、当該企業の業務により負傷し、又は疾病にかかった場合をいい、業務とはまったく関係がない私傷病は含まれません。

また、休業は「療養のため」であることが必要です。すなわち、療養のため休業する必要がないのに出勤しない場合や、治癒(症状固定)したにもかかわらず通院しているような場合は含まれません。

「その後30日間」は、療養のため休業する必要が認められなくなって出勤した日又は出勤し得ることができるようになった日から起算されます。

 

 

解雇禁止の例外

下図の2つに該当する場合、解雇が可能となります。

業務上災害の解雇禁止の例外

ポイント①業務上の傷病による療養開始後3年を超えて治癒しない労働者に対して打切補償(※)を支払う場合

②天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となった場合

※打切補償とは、使用者が被災労働者の平均賃金の1200日分を支払うというものです(労基法81条)。

これについて、労災保険給付との関係が問題となります。

労災保険法は、「業務上負傷し、又は疾病にかかった労働者が、当該負傷又は疾病に係る療養の開始後3年を経過した日において傷病補償年金を受けている場合又は同日後において傷病補償年金を受けることとなった場合には、労働基準法第19条第1項 の規定の適用については、当該使用者は、それぞれ、当該3年を経過した日又は傷病補償年金を受けることとなった日において、同法第81条の規定により打切補償を支払ったものとみなす」と規定しています。

したがって、被災労働者が療養開始後3年を経過した日において傷病補償年金を受けている場合、又はその日以後、この年金を受けることとなった場合は、解雇禁止が解除されることとなります。

 

 

罰則

業務上災害の場合において、解雇禁止の例外事由がないにもかかわらず、解雇した場合、使用者は、6か月以下の懲役又は30万円以下の罰金に処せられます(労基法119条1号)。

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