弁護士コラム

リモートハラスメント(リモハラ)とは?弁護士が教える該当事例と対策

執筆者
弁護士 杉原拓海

弁護士法人デイライト法律事務所 弁護士

保有資格 / 弁護士・3級ファイナンシャル・プランニング技能士

近時、リモートワーク、いわゆる「テレワーク」の普及が推進されており、「働き方改革」が進められているといえます。

ですが、そうした新たな働き方への移行の中で、「リモートハラスメント」(リモハラ)と呼ばれる、新たなハラスメントが問題となりつつあります。

5月14日、東京都知事が定例会見において、リモハラ事例がたびたび発生していることについて触れ、リモハラ専用の相談窓口を設けることなどが発表されました。

そこで、今回は、リモハラといわれる事例について検討していきたいと思います。

 

何がリモハラに該当する?

まず、一般的にリモハラと言われることの多い事例について、いくつかご紹介します。

①業務に関する監視・過度な進捗の確認

社員の自宅での勤務状況を監視するため、場合によっては常時Web管理システムを接続した状態で執務させるなどといった事案もあるようです。

常時接続は法的には直ちに違法になるとは言い切れませんが、こうした体制を取ることで、社員との信頼関係の悪化、さらにはモチベーションの低下などにつながる可能性もあります。

 

②服装、化粧等への(不適切な)指摘

服装や化粧等の身だしなみ面について、最低限必要な指摘を行うべき場合は当然あります。

ですが、常に上下スーツの着用を強要したり、女性の化粧について言及したりするのは、典型的なリモハラの事例に該当するといえるでしょう。

 

③業務上不要なやりとり

業務上必要なやりとりであればもちろん問題はありませんが、二人でのWeb会議を強要し、プライベートな質問をするなど、度を超えたやりとりをしてしまうと、ハラスメントと解釈されてしまう可能性もあり、注意が必要です。

執務中の自宅の様子や家族などを見せるよう求めたり、私服姿を見せるよう求めたりするなど、明らかに限度を超えていると言わざるを得ない事案も、一部では存在しているようです。

 

④通常の業務時間を超えたやりとりの強要

リモートワークになると業務時間と余暇時間の切り分けへの意識が希薄になりがちであり、業務時間外に社員に連絡を取ってしまうケースがたびたび生じています。

さらに、業務時間を若干過ぎた程度であればまだしも、深夜帯など遅い時間にもメールを送り返事を求めたりするなどのケースも、場合によっては存在するようです。

 

 

リモハラ防止策

それでは、リモハラと言われることを防止するためには、どのような方策を取ることが考えられるでしょうか。

 

勤怠管理ツールの確立

Web勤怠管理システムの導入、チャットでの業務開始・終了の報告、始業時・終業時のミーティングの実施など、やり過ぎにならない範囲で上記の事項について確認できるシステムを導入することは、リモハラを防ぐ一助になり得るといえます。

本文の主題とは少し離れますが、リモートワークにおいて難しい問題の一つに残業代の計算をどうするかという問題があります。

こうした勤怠管理システムを導入することで、リモートワークにおいても残業代の計算がしやすくなり、事後的な問題の発生を回避できるといったメリットも考えられます。

 

服装等に関する不用意な発言、業務に関係のない発言は控える

これは心掛けというレベルかもしれませんが、服装や女性の化粧などについて、指摘するほどでもないような事柄については、不用意に触れるのは避けた方が無難といえるでしょう。

また、Web会議システムを乱用し、他人に聞かれない環境を作り出して業務と関係のないプライベートな事項を質問するなどの行為が言語道断であることは言うまでもありません。

リモート会議を行う場合は、2人以上でなければならないなどといったルールを作ってしまうことも、有効な対策であるといえます。

 

時間外のやり取りは、原則として行わないようルールを徹底する

時間外のやり取りに関しては、何があっても可能な限り行わない、というのが一番の対策になります。

加えて、こうした時間外での業務対応には残業代が発生することになります。

ですので、リモハラとして捉えられるのみならず、こういった残業に対して残業代を支払っていないということになれば、後に社員から残業代を請求される可能性も生じさせてしまいます。

社内での連絡にとどまらず、対外的な対応に関しても、残業代発生の対象となります。

業務時間外は電話・メール等いかなる手段においても、対外的なやり取りはしないように徹底しておくことも、トラブル回避の上では有用であると考えられます。

 

 

まとめ

始業・終業時の確認や、適宜の進捗確認によって、社員の勤怠管理は十分に期待できます。

逆に、自宅に居ながらにして厳しい管理を受けたり、深夜でもやり取りを強要されたりすることで、社員は自宅でも心が休まらず、結果として生産性が落ちてしまう可能性もあります。

また、そもそもオンライン上でのコミュニケーションには、どこまでいっても限界があるものです。

対面の時と異なり、会話の微妙なニュアンスが伝わらず、行き違いが生じることも少なくありません。

むしろ今は、オンライン上のコミュニケーション手段をうまく使いこなして、淡々とやるべきことを行い、コロナ禍が落ち着いた頃、対面で十分なコミュニケーションを取ればそれで足りるのではないでしょうか。

従来の働き方を大きく変えるリモートワークに適応できるよう、私たち自身も意識づけを変える必要があるといえるでしょう。

 

 

 




  

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