業務災害とは?
業務災害とは、労働者の業務上の負傷、疾病、障害又は死亡をいいます。業務災害が生じた時に、労働者に対して、労災保険制度に基づき、国から一定の保険給付がなされるのは、前述したとおりです。
とはいえ、そもそも「業務上」の災害なのかどうかについて、判断が難しい場合もあります。
「業務上」の判断にあたっては、①業務遂行性(「業務」上)と②業務起因性(業務「上」)が考慮されます。
業務遂行性
労働者が、使用者の支配化、管理下にある状況のことをいいます。
例えば、
・作業中にトイレに行った際の怪我
・休憩中の災害
・出張先での宿泊中の怪我
には、業務遂行性が認められると考えられます。
他方、事業場外で、かつ、業務とはいえない活動に従事しているときには、業務遂行性が認められないと考えられます。
過去の裁判例
<名古屋高金沢支判昭和58年9月21日>
労働者が、会社の実施した忘年会に参加し、同会終了後同会場玄関前付近で事故に遭い負傷した事案について、忘年会は強制参加ではなかったとして業務遂行性が否定されました。
<東京地判平成11年8月9日>
労働者が出張先で、同じ現場で働いていた他社の従業員の送別会に出席して飲酒後、溺死した事案について、送別会は任意参加であったとして業務遂行性が否定されました。
業務起因性
業務に従事すべき立場又は業務従事行為に関して、労働者が労働契約に基づき使用者の支配化にあることに伴う危険が現実化したものと経験則上認められることをいいます。
例えば、
・業務に関連するうつ病による自殺
・業務中に、作業内で爆発事故が起こった結果死亡した場合
には、業務起因性が認められると考えられます。
他方、
・酒を飲みながら作業をしていて、その結果転んで怪我をした場合
・避けられない自然現象により死亡した場合
には、業務起因性が認められないと考えられます。
過去の裁判例
<最1小昭和49年9月2日>
甲が乙と仕事上のことから争いを起こし、建設現場付近の県道上で頭部を殴打され、それがもとで死亡した事案において、甲が乙に対して、その感情を刺激するような言辞を述べ、乙の呼びかけに応じて仕事場から県道上まで降りてきて嘲笑的態度をとり、乙の暴力を挑発したという事実を認定して、業務起因性を否定しました。
このように、「業務遂行性」「業務起因性」の判断は、ケースバイケースとなります。
「業務遂行性」に関しては、そもそも使用者の支配下、管理化にあったのかについて微妙なケースがあります。
また、「業務起因性」に関しては、例えば、業務上の疾病(職業病)といえるのかなどで難しい判断が必要なケースもあります。
ケースバイケースの判断にならざるを得ない、業務上の災害(業務災害)について迷われた場合は、労働問題に詳しい専門家に相談されることをお勧めします。
