弁護士コラム

「内定」「内々定」「内定の取消し」について

執筆者
弁護士 西村裕一

弁護士法人デイライト法律事務所 北九州オフィス所長、パートナー弁護士

保有資格 / 弁護士・入国管理局申請取次者

内定(採用内定)とは、「就労又は労働契約の効力の発生始期付きで解約権留保付きの労働契約の成立」と考えられています。

弁護士森内公彦イラスト具体的に、新卒予定者の採用内定の流れに沿って説明します。

① 企業が募集をかけます(これは労働契約の申込みの誘引です)。

② ある学生がその企業に応募したり、採用試験を受験します(これが、労働者による労働契約の申込みです)。

③ 企業が、その学生に対して採用内定通知などで内定を知らせます(これが、労働者による契約の申込みに対する承諾となります)。

内定のイメージ画像③によって試用労働契約あるいは見習社員契約が成立し、実際に就労を開始する時期(例えば、大卒生であれば4月1日)を「就労又は労働契約の効力の発生始期付きで解約権留保付き」として、それまでに卒業できなかった場合や、病気、けがなどにより正常に勤務ができなくなった場合に「解約できることを条件としている」労働契約が成立したものと考えるのです。

これとよく似た言葉に「採用内々定」がありますが、これは多くの場合には企業において応募者においても、労働契約の確定的な拘束関係に入ったとの認識には至っていないと考えられるので、採用内定そのものとは認め難い場合もあります。

とはいえ、実際の実務では、内々定や内定といった文言・形式にこだわらずに、具体的な事実関係に即して、就労又は労働契約の効力の発生始期付きで解約権留保付きの労働契約の成立に至ったかを判断することになります。

例えば、採用を確信させるような言動があり、他社への就職活動を妨げるような事実上の拘束があるような場合には、内々定の段階でも解約権留保付きの労働契約が成立していると解釈されることもあります。

次に「内定の取消し」について説明します。

内定の取消しが問題となるのは、内定をもらった学生が内定取消しにあったために、会社を相手に、従業員としての地位の確認の訴えを起こしたり、損害賠償請求をした時等です。

上記の内定の意義からすると、内定取消しは留保した解約権の行使ということになります。これは法的には解雇ですので、解雇の場合と同様に権利濫用法理に服することになります。

解雇における権利濫用法理について規定した、労働契約法16条には
「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして無効とする」

とありますので、この法理に服することになります。

過去の裁判例では

<最2小判昭和54年7月20日>において、留保付解約権の行使について、
「採用内定当時知ることができず、また知ることが期待できないような事実であって、これを理由として採用内定を取り消すことが解約権留保の趣旨、目的に照らして客観的に合理的と認められ社会通念上相当として是認することができるものに限られる」

と判示しています。

例えば、内定者が卒業できなかった場合や就労に耐えられないほど健康状態が悪化した場合などが、これに該当する可能性があります。

業績悪化による内定取消しについては、整理解雇の判断枠組みが準用され、人員削減の必要性、内定取消回避努力、人選の合理性、手続の妥当性という4要件をクリアする必要があります。

リストラのイメージ画像整理解雇の4要件については

https://www.fukuoka-roumu.jp/110/11015/

に詳しく記載しております。

また、使用者の恣意的な内定取消しについては債務不履行又は不法行為に基づく労働者の損害賠償請求が認められますし、仮に、内定取消し自体がやむを得ないとされた場合でも、内定から内定取消しに至る過程において企業が説明義務を怠ったとして損害賠償責任が課せられたケースもあります。

 

 




  

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