弁護士コラム

非正規従業員にも賞与を支払う?!同一労働同一賃金のガイドライン

執筆者
弁護士 西村裕一

弁護士法人デイライト法律事務所 北九州オフィス所長、パートナー弁護士

保有資格 / 弁護士・入国管理局申請取次者

有給休暇のイメージ画像日本における労働者の約4割が非正規と言われています。このコラムをお読みの企業経営者の方も、自社で非正規社員を雇用をされている方は多いのではないでしょうか。

非正規社員を雇用するメリットの一つに、正社員よりも給与等の待遇を下げることができる(人件費を削減できる)という点があげられると思います。

ところが、この点に関して、政府が、平成28年12月20日、重要なガイドラインを発表しました。

ガイドラインの内容を箇条書きで挙げると、大まかには、以下のとおりです。

・基本給は「職業経験・能力」「業績・成果」「勤続年数」が同じなら同一にしなければならない。ただし、違いに応じた差は容認。
賞与は非正規にも支給。業績などへの貢献に違いがあればそれに応じた支給で構わない。
・正規と内容などが同じ役職なら役職手当は同一にしなければならない。
・時間外労働手当や深夜・休日手当は同じ割増率にしなければならない。
通勤手当・出張旅費は同一支給しなければならない。
・食堂や休憩室などの福利厚生施設は非正規にも利用を認めなければならない。
・派遣先社員と職務内容・配置の変更範囲が同じ派遣社員に対し、派遣会社は同じ賃金や福利厚生、教育訓練を実施しなければならない。

まとめますと、
①時間外労働手当の割増率
②深夜、休日労働手当の割増率
③通勤手当、出張旅費の支給
④食堂、休憩室、更衣室等の会社の施設の利用
については、非正規社員であっても、正社員と同一の待遇にしなければなりません。

一方で、
①基本給
②昇給
③賞与、役職手当
については、異なる待遇をすることが認められます。

もっとも、以下の場合には、異なる待遇をすることは認められなくなります。

①基本給
経験、能力、実績が同一の場合

②昇給
能力の向上が同じ水準の場合

③賞与、役職手当
会社の業績への貢献の度合いや役職の内容・責任が同じ場合

すなわち、このガイドラインでは、将来の役割期待が異なることを待遇格差の理由付けにすることは許されませんので、注意が必要です。

会議のイメージイラストこのガイドラインは、まだ、法律ではありません。しかし、今後、政府はこのガイドラインに沿う内容で各種法改正を行う見込であり、平成29年の立法を目指すとのことです。

非正規社員を多く活用している企業は、法改正がなされると、賞与支給義務が生じるなど、人件費が嵩むことが予想されます。

引き続き、この件についての法改正の動きを注視し、新たな情報があれば、随時、取り上げていきたいと思います。


 

 




  

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