労働移動支援助成金と退職勧奨問題

労働移動支援助成金

労働移動支援助成金とは、事業主が、離職を余儀なくされる労働者に対する再就職支援を職業紹介事業者に委託したり、求職活動のための休暇を付与した場合に事業主に支給される助成金です。
助成金の対象となるのは以下のような場合です。
 

①再就職支援

 離職する労働者の再就職支援を職業紹介事業者に委託した場合
再就職支援の一環として訓練やグループワークを実施した場合にはさらに助成金が上乗せされます。
 

②休暇付与支援

 離職が決定している労働者に対して求職活動のための休暇を与えた場合
 
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助成金の金額は下記のとおりです。
①再就職支援の場合、再就職支援委託時に10万円、再就職が実現した場合には、委託費用の金額等や就職支援のための訓練の有無等から個別に計算されることになります。
②休暇付与支援の場合、再就職実現時に当該
休暇1日あたり5000円(中小企業事業主については8000円、上限180日分)が助成されます。
 
助成を受けるにあたっては、再就職援助計画の作成や対象となる労働者の承諾等の条件を満たす必要があります。詳細な条件については、厚生労働省作成のパンフレットをご参照ください。厚生労働省のHPからパンフレットのPDFを見ることができます。


 

労働移動支援助成金をめぐる退職勧奨問題

労働移動支援助成金をめぐって、一部の職業紹介業者が、企業に対して人員削減のノウハウを積極的に提案するなどして、就職支援の委託を促し、実際に退職強要と疑われるような退職勧奨をしていることが国会審議等で指摘されました。
これを受けて厚生労働省は、平成28年3月14日、全国民営紹介事業協会に対し、職業紹介業者が、企業の労働者に対して退職勧奨を実施したり、積極的に退職勧奨の実施を提案することは不適切である旨の通達を出しています(職発0314第2号)。
 
 
企業の経営上の問題から、適法な退職勧奨を実施すること自体は全く問題ありません。むしろ解雇が厳格な要件でしか認められない以上、退職勧奨は、効率化を図りたい企業にとっては、有効な手段であると言えます。
 
もっとも、その方法については慎重にならなければなりません。退職勧奨は労働者の自由な意思決定を妨げるような態様でなされた場合には、不法行為と評価され、労働者から損害賠償請求をされる可能性があります。また、労働者が退職の意思表示をしていたとしても、その有効性について争われ後々紛争になる可能性もあります。

 
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仮に、違法な退職勧奨を行なったのが委託した外部の業者であったとしても、会社の決定で当該業者に退職勧奨を委託している以上、会社自身が違法な退職勧奨を行なった場合と同様の紛争発生のリスクがあります。

 
また、外部の業者に退職勧奨を委託することは、退職勧奨の実態が把握しづらくなるというデメリットもあります。
したがって、紹介派遣事業者等から、労働移動支援助成金制度を背景に退職勧奨の委託を提案されることがあっても、安易に委託すべきではありません。
 
なお、平成28年4月1日以降、労働移動支援助成金の申請前に、委託する予定の紹介派遣業者から人員削減や退職勧奨についてアドバイスを受けていた場合には、助成金が支給されないことになっていますので、ご注意ください。


 
 

適切な退職勧奨

先にも述べたとおり、企業の経営上の問題から適切に退職勧奨をすること自体は法的に全く問題ありません。問題はその実施方法です。
 
退職勧奨の違法性、または、退職の意思表示の有効性は、勧奨の回数、場所、時間、対象者の拒否の強さ、言辞の強迫性などの考慮要素を総合考慮して判断されることになります。

したがって、退職勧奨を実施するにあたっては、対象者の意向を確認しつつ、密室や長時間にわたらないよう配慮した上で、退職勧奨に至った会社側の事情を丁寧に説明したり、退職優遇策を示すなど、穏当に実施していくことが大切です。
 
また、労働者にとって退職又は転職を決意することは一大決心であり、退職・転職後の生活について大きな不安を抱えていますから、その点に十分配慮し、先に紹介した労働移動支援助成金等の公的支援を利用しつつ
再就職に向けて親身に相談に乗ることも大切です。


 

参考判例

 ご参考までに退職勧奨が違法であると判断され、損害賠償が認められた裁判例をご紹介します。
 

~下関商業高校事件~

(最高裁判決昭和55年7月10日)
『従前から退職勧奨に応じないことを表示していた市立の高校教員二人に対してなされた退職勧奨で、それぞれ数か月間に11回と13回にわたり市教委に出頭を命じられ、20分~2時間15分に及ぶ退職勧奨が行われた。その際に、「あなたが辞めれば欠員の補充もできるし、学校設備の充実もできる」「夏休みは授業がないのだから、毎日来てもらって勧奨しましょう」などと発言するなどしていた事案』
 この事案に関しては、相手方が下関市であったことから国家賠償請求ではありましたが、最高裁は、退職勧奨の違法性を認め損害賠償を認めています。
 
 

~全日空事件~ 

(大阪高裁判決平成13年3月14日)。
『航空会社の女性客室乗務員が事故から復職する際になされた退職勧奨で、約4か月間にわたり、5人の上司らが30数回もの面談や話し合いを行い、その中には約8時間に及ぶものもあり、面談の中で「CAとして能力がない」「別の道があるだろう」「他のCAに迷惑」と述べ、大声を出したり机を叩いたりした事案』
この事案に関し、裁判所は社会通念上許容する範囲をこえていると判示し、慰謝料として80万円が認められています。

 
 

まず弊所にご相談を!

topImg1.jpg以上のように、退職勧奨を実施するにあたっては、トラブルにならないよう十分に注意
することが必要ですが、退職勧奨に限らず、会社内部で従業員に対して、何らかの処分(例えば、懲戒処分、解雇など)をする際には、後々トラブルにならないよう注意すべきです。
 
弊所では、発生したトラブルの解決はもちろんですが、トラブルの発生を未然に防止することにも尽力しています。
ご相談いただければ、実施されようとしている処分から発生する法的リスクについてご説明させて頂きます。また、可能であれば、よりリスクが低く目的を達成できる手段をご提案することができる場合もあります。
会社の人事上の処分等について、お困りのことがございましたら、お気軽にご相談ください。それぞれの業種に特化した弁護士が対応させていただきます。

労働問題に関する弁護士コラムです。ぜひご覧下さい。

                                                      

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