弁護士コラム

アデランスのセクハラ裁判、超高額で和解

執筆者
弁護士 西村裕一

弁護士法人デイライト法律事務所 北九州オフィス所長、パートナー弁護士

保有資格 / 弁護士・入国管理局申請取次者

アデランスのセクハラ裁判について

かつら製造・販売で有名なアデランスの元女性従業員が、上司だった男性従業員から繰り返しセクハラを受け、心的外傷後ストレス障害(PTSD)を発症し、退職を余儀なくされたとして、会社に対して2700万円の損害賠償を求めていた裁判で、昨年、和解が成立していたことが分かりました。

和解内容は、①会社が、元女性従業員に対し、解決金1300万円を支払う(ただし、上司だった男性従業員が、その半額650万円を支払う)、②会社は、元女性従業員の居住地に、上司だった男性従業員を転勤・出張させないよう努める、といったものだったとのことです。

裁判所のイメージ画像セクハラが争点となる裁判における慰謝料額は、高くても200・300万円程度となることが多いことからして、今回の和解金額はかなり高額といえます。

報道によると、被害者女性は、警察に被害届を出そうとしましたが、会社幹部から止められ、精神的に不安定になり休職を余儀なくされた後、PTSDと診断されました。会社は、いったん女性を特別休職扱いとしましたが、その後給与の支払いを取りやめ、女性はその後退職したとのことです。

今回、これほど和解金額が高額となったのは、上司によるセクハラ行為が悪質であっただけではなく、セクハラ行為発覚後の会社の行動にも問題があったとの心証を裁判所が抱いた可能性があります。

 

 

セクハラとは

悲しい女性のイメージ画像上記アデランスの事件では、上司だった男性従業員は、被害者女性に対し、「数字を達成できなかったら彼女になるか、研修もしくは転勤だ」と脅すなどしたうえ、無理やりキスをしようとする、体を触る等のセクハラを繰り返したとのことです。

これは、労働者の意に反する性的な言動により労働者の就業環境が不快なものとなったため、能力の発揮に重大な悪影響が生ずるなど、その労働者が就業するうえで看過できない程度の支障が生ずる、いわゆる「環境型セクハラ」であるといえます。

 

 

セクハラが発生したとき、会社が負う責任

会社は、セクハラの被害者から責任を追及されたとき、以下のような責任を負うことになります。

 

①損害賠償責任

使用者責任(民法715条)

勤務時間中や、勤務場所内でのハラスメントであれば、「職務を行うにつきなされた」(民法715条)として、会社も加害者と連帯して不法行為責任を負うことになります。

職場環境配慮義務・安全配慮義務違反の債務不履行責任

会社は、労働者が働きやすい職場環境となるよう配慮する義務や、労働者の安全に配慮する義務を、労働契約上負っていると解釈されるため、ハラスメントが発生した=当該義務違反があったとして、債務不履行責任を負う可能性が高いといえます。

 

②行政措置

行政による助言、指導、勧告、企業名公表、過料等の措置を受ける可能性があります。

 

 

セクハラが発生したとき、会社に生じる不利益

また、セクハラが発生した場合、会社には様々な不利益が生じ得ます。

組織効率の悪化

ハラスメント被害により、被害者のみならず周囲の従業員のモチベーションが低下し、能力の有効活用が阻害されることになります。

企業イメージの低下、採用・定着面でのダメージ

・新聞、テレビなどの報道
・インターネット(SNSも含む)上の風評被害

業績悪化

ハラスメント被害が生ずることで、調査や対応等に労力を割く必要が生じ、業務の円滑な遂行が阻害されるおそれがあります。

金銭的なもの(休業損害、逸失利益、弁護士費用)

被害者がハラスメントによって心身の健康を害し休職を余儀なくされた場合、休業損害・逸失利益が生ずる可能性があります。また、アデランスの裁判のように、被害者から損害賠償請求を行われた場合、賠償金のみならず対応のための弁護士費用が発生することになります。

 

 

 

セクハラ対策‐予防と早期対応‐

セクハラが一度起こると、会社には重い責任と多大なダメージが生じることがあるため、予防が必要です。

弊所HPでは、セクハラ対策の書式集等もご紹介しておりますので、ぜひご利用ください。

また、セクハラ対策としては、外部相談窓口を設置しておくことが有効です。当事務所では、外部相談窓口を当事務所としていただくセクハラ・パワハラ対策110番というサービスも行っております。セクハラ対応の企業防衛戦略の一環として、ぜひご利用いただければと思います。(セクハラ・パワハラ対策110番について、詳しくはこちらをご覧ください。

また、セクハラが起こってしまった場合、速やかに適正な対応をすることが何よりも重要です。お困りの方は、ぜひ早めに弁護士にご相談ください。

 

 




  

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