ブラック企業の社名公表について

執筆者
弁護士 西村裕一

弁護士法人デイライト法律事務所 北九州オフィス所長、パートナー弁護士

保有資格 / 弁護士・入国管理局申請取次者

ブラックビジネスのイメージ画像塩崎恭久厚生労働相は、違法な長時間労働を繰り返すいわゆる「ブラック企業」について、行政指導の段階で企業名を公表する方針を明らかにしました。

これまでは、労働基準法に違反した企業にはまず行政指導をした上で、従わなかった場合に書類送検し、社名を公表していましたので、社名が公表される段階が1段階早まったことになります。

 

社名公表の条件

公表対象となるのは、複数の都道府県で事業を展開する社会的に影響力の大きい大企業が対象となっており、従業員300人以下などの中小企業は対象となっていません。さらに、公表の対象となるのは、大企業の中でも、

①残業代不払いなど労基法違反があり、1カ月当たりの残業、休日労働が100時間を超えること

②1事業所で10人以上の労働者に違法な長時間労働があること

③1年間に3カ所以上の事業所で違法な長時間労働があること

以上の3つの条件に該当した場合に公表されることになります。

発言者のイメージ画像この条件に該当し、社名を公表されたときの企業の損失は多大なものです。ブラック企業としてのイメージが会社についてしまい、信用を失い、有能な人材確保も困難になるでしょう。

厚生労働省が、このように社名を公表する段階を早めたのは、近年、過重労働による過労死や自殺に追い込まれるケースが社会的に問題視されており、企業に対して法に沿った労務管理を要求していることにあると考えられます。

企業は、こうした社会的要請に応えるよう、コンプライアンス体制の整備を迫られている状況にあるのです。

 

 

コンプライアンス体制整備の重要性

今回、厚生労働省が、行政指導の段階での社名公表の対象としたのは大企業のみですが、社会的にコンプライアンス体制の整備が求められているのは、中小企業も同様です。

確かに、中小企業の場合、日々厳しい生存競争の只中にあり、そこまで手が回らないとい う実情もあるかと思います。

しかし、コンプライアンスを怠った場合、それが原因で労使問題に発展する危険や、従 業員のセクハラやパワハラ等の違法行為により業務に支障が生じたり、あるいは、外部 的な違法行為で会社の信用を傷つけてしまう危険があります。

ですから、1度十分にコンプライアンスについて検討されることをお勧めします。

 

 

就業規則の見直しの必要性

コンプライアンスの整備にあたって、会社としてまずできることは就業規則の見直しです。

経営者の方の中には、就業規則は、社労士や弁護士に頼んで作成しているから問題ないとお考えの方もいらっしゃるかもしれません。

しかし、作成してから年月が経っていたら会社の内部事情や会社を取り巻く環境も変わっているはずです。

例えば、作成当初は正社員のみの会社でも、その後パートタイマーを雇い入れることもあるでしょう。その場合には、別途パートタイマー用の就業規則も整備すべきです。 また、最近では、SNSにより容易に情報が拡散しますから、特に個人情報を扱う会社では従業員にSNSの取扱いについて注意喚起する条項や違反した場合の罰則条項なども必要となるかもしれません。

このように会社の内部事情や会社を取り巻く環境は常に変化しますから、それに合わせて就業規則も随時見直しする必要があるのです。

 

 

コンプライアンス整備は会社の業務改善にもつながります!

コンプライアンス整備として就業規則の見直しをするにあたっては、会社の内部事情を再度見直しすることになりますから、その過程で、業務運営上の改善点が見つかり、より効率的な業務遂行が可能になることもあります。

また、業務実態によっては、変形労働時間制や、みなし労働時間制を利用することで、従業員の残業代を減らすことができ、経費削減にもつながるかもしれません。 このように、コンプライアンス体制を整備することで、会社の業務改善にもつながることもあります。

 

 

従業員にもコンプライアンス意識を根付かせる

勉強会のイメージ画像いくら会社がコンプライアンスに沿った活動をしていたとしても、従業員のコンプライアンス意識が希薄であれば、意味がありません。

会社内部で従業員の違法行為があれば会社業務に支障が出ますし、外部で違法行為があれば会社の信用問題に発展しかねないからです。

そこで、従業員に対しても十分にコンプライアンス意識を持たせることが肝要です。

そのために、定期的にコンプライアンス教育を施すための研修をするなどして意識啓発することが大切です。

ただ、経営者の方の中には、研修までしている余裕がないといった方もいらっしゃるかと思います。

そういった場合であっても、就業規則にコンプライアンス項目(服務規律、機密保持、パワハラ・セクハラの禁止など)を明確に定めておき、従業員に周知しておくことは最低限必要です。

 

 

最後に

冒頭で述べさせて頂いたとおり、現在、社会的に企業に対してはコンプライアンスが強く要請されています。

ただ、コンプライアンス体制の整備には法的観点が不可欠であり、法律の専門家でなければ整備することは困難です。

弊所では、企業のコンプライアンス整備についてもアドバイスさせて頂いておりますので、お困りの経営者様がいらっしゃいましたら、お気軽にご相談ください。

 

 





  

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