計画年休について


休暇の使用は原則として個人の自由に任されています。
しかしながら、日本の労働環境は、上司や同僚の目を気にして休暇が取得しにくいといわれています。
 
そこで、有給取得を促すために、あらかじめ計画的に、職場でいっせいに、またはグループ別の交代で休暇を使用する制度として、この計画年休があります。
 

○計画年休の導入方法

計画年休を導入するためには、労使協定が必要です。
すなわち、使用者は、事業場の過半数労働者を組織する労働組合または過半数労働者を代表する者との書面による協定により年休を与える時季についての定めをすることで、計画年休を導入できます。この労使協定については労基署への届出は不要です。
 
Q労働者の同意や就業規則の定めが必要か?
計画年休制度をめぐる重要な解釈問題は、計画年休を定める労使協定に、労働者に対する拘束力が認められるかどうかです。
すなわち、時間外労働に関する労使協定は、免罰的効果しかないと解されており、労働者に時間外労働が認められるためには、労働者の同意や就業規則の規定など労働契約上の根拠が必要であると考えられています。計画年休協定も同様に考えられるかどうかが問題となるのです。
 
この問題について、法解釈としては、労働者の同意や就業規則の定めは不要と考えます。
 
計画年休制度は、従業員に計画的に年休を取得させるということを目的とする制度であることに鑑みると、個々の労働者の同意がないかぎり労使協定に拘束力がないというのでは、この制度の意味が大幅に失われるものとなります。
 
また、年休権は、労働契約を根拠として成立するものではなく、労基法に基づいて成立するものである以上、労基法が年休の取得方法について独自の方法(労使協定による強制的付与)を定めることもできるはずです。
 
【参考判例:三菱重工業長崎造船所事件 福岡高判平成6年3月24日】
なお、裁判例においても、会社と過半数組合との間で締結された書面による協定で、年休の時季指定が集団的統一的に特定された場合、「その日数について個々の労働者の時季指定権及び使用者の時季変更権は、ともに当然に排除され、その効果は当該協定により適用対象とされた事業場の全労働者に及ぶと解すべきである」と判示されています。
 
 

○就業規則に規定する場合の記載例

もっとも、厚生労働省は、計画年休を定める場合、就業規則で定めることを前提としているようです。また、解釈上見解が分かれるところでもありますので、トラブル防止の観点からは、就業規則で規定しておく方が望ましいでしょう。
 
その場合、以下のような記載を参考とされてください。
 
第○○条(計画年休)
会社は、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においては、その労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては、労働者の過半数を代表する者と労働基準法第39条第6項に定められる労使協定を締結し、第○○条で定める年次有給休暇のうち5日を超える部分については、その労使協定の定めるところにより計画的に付与するものとする。
 

計画年休の付与方式

計画年休の付与方式としては、次の3つがあるとされています(昭和63年1月1日基発1号)。
 
①事業場全体でのいっせい付与方式

②班(グループ)別の交替制付与方式

③年次有給休暇付与計画表による個人別付与方式
 
導入に当たっては、上記の方法の中から、会社の実態に応じた方法を選択することになります。
 
 
 

○計画年休の活用例

計画年休は、さまざまな時季に活用できます。
以下、一例をご紹介します。
 
①夏季、年末年始に年次有給休暇を計画的に付与し、大型連休とする場合
 
例えば、夏季休暇(8月13日から8月15日)や年末年始休暇(12月31日から翌年1月3日)を特別休暇としている会社が、これに有給休暇を付加する形で指定する場合、次のような協定が考えられます。
 
「平成26年の年次有給休暇のうち4日分については、次の日に与えるものとする。
8月11日、8月12日、12月29日、12月30日」
 
上記の場合、従業員は、特別休暇や土日と合わせると、夏季は8月9日から8月17日まで、年末年始は12月27日から1月4日まで、それぞれ9連休となります。
そして、労使協定で計画年休日として指定された日数分(上記の例では4日分)、労働者が休暇日として自由に指定できる日数は消滅します。
 
なお、上記は、従業員にいっせいに休暇を取得させる例ですが、例えば、ある従業員については、8月18日と8月19日、1月5日、1月6日と指定することで、交代制で休暇を取得させることも可能です。
 
②アニバーサリー(メモリアル)休暇制度を設ける場合

有給休暇の計画的付与を活用して「アニバーサリー休暇」と「多目的休暇」を設けることも考えられます。
例えば、
「年次有給休暇のうち、6日分については、次のとおり与えるものとする。
アニバーサリー休暇として、誕生日、結婚記念日等を含む連続3日間
多目的休暇として、従業員個人が自由に設定する連続3日間」
 
③閑散期に年次有給休暇の計画的付与日を設け、休暇の取得を促進する場合

例えば、1月と2月が閑散期の場合、次のような協定が考えられます。
 
「年次有給休暇のうち4日分については、次の日に与えるものとする。
1月の第2、第4金曜日、2月の第2、第4金曜日」
 
 
上記のような労使協定で有給休暇日とされた日については、特別の事情が認められる場合を除き、労働者個人がその日に休暇を取る意思のあるなしにかかわらず、休暇日とされます。
 
なお、裁判例上は、計画年休協定には、「計画年休を与える時季及びその具体的な日数を明確に規定しなければならない。」とし、この要件を満たさない計画年休協定を無効としたものがあります(全日本空輸事件・大阪地判平成10年9月30日)。
しかし、学説上は、計画的に付与する日数とその特定方法(時期・手続など)のみを定めることでも適法とする見解が有力です。
 
 

○運用上の注意点

労使協定で計画年休日として指定された日数分、労働者が休暇日として自由に指定できる日数は消滅します。ただし、労働者が自由に指定できる休暇日数として最低5日は残しておかなければなりません
したがって、有給休暇の残日数が不足している者をも計画年休の対象とする場合には、付与日数の増加などの措置が必要となります。
また、事業場全体での一斉付与の場合、有給休暇の権利のない者を休業させる場合、賃金の支払いが必要と考えられます。
 

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