採用内定の取消しの具体例

 
では、具体的にどのようなケースが問題となるでしょうか。

ここではよく問題となるケースを取り上げて解説します。

○経歴詐称

採用内定通知書等に、「採用にあたり提出した書類に虚偽があったとき」は採用内定を取消す旨記載されていることはよくあります。

では、履歴書等の経歴を偽っていた場合、それを理由に採用内定を取り消すことができるでしょうか?

前述したように、採用内定の取り消しは、①客観的合理性と②社会通念上相当性という要件を満たす必要があります。
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そのため、「提出した書類に虚偽」という取消事由も、その文言どおりには受け入れられず、虚偽記入の内容・程度が重大なもので、それによって従業員としての不適格性あるいは不真義性が判明したことを要すると解されます。

例えば、ある経験(職歴)を買われて採用内定を出したのに、その職歴が虚偽であったような場合、採用内定の取消しは可能と思われます。

個々の事例によりますが、採用内定の取消しでお悩みの方は、労働裁判に詳しい弁護士にご相談されることをおすすめします。

○悪い噂

客観的な裏付けを欠く悪い噂程度では、取消事由として不十分です。
悪い噂に関する、採用内定の取消しの参考判例をご紹介します。

【オプトエレクトロニクス事件-東京地判平16.6.23】
「被告が本件採用内定を取り消したのは、原告に前職のアプティ勤務時代に悪い噂があり、その噂は信用するに足り、この噂のため、被告の営業部門(第1営業部、第2営業部、新規開拓部)で原告を受け入れるところがないという点にある。当該悪い噂とは、(中略)次の5点に集約できる。第1は、原告の勤務態度、勤怠について問題がある点であり、第2は、空売りがある点であり、第3は、客先とのトラブルがある点であり、第4は、社内的に問題視されていた点であり、第5は、退職に至る経緯が不明瞭である点である。(中略)被告が本件採用内定取消しに用いた情報は、あくまで伝聞にすぎず、噂の域をでないものばかりであり、当該噂が真実であると認めるに足りる証拠は存在しないというべきである。(中略)以上によれば、本件採用内定取消しには、客観的に合理的と認められ社会通念上相当として是認できる事由を認めるに足りる証拠が存在しないというべきである。」


○経営状態の悪化

採用内定後、会社の業績が悪化したことを理由に採用内定を取消す場合です。
この場合、整理解雇に準じた検討が必要です。

すなわち、整理解雇では、一般には次の4要件を満たすことが必要と考えられています。

①企業が客観的に高度の経営危機にあり、解雇による人員削減が必要やむを得ないこと(人員削減の必要性)
②解雇を回避するために具体的な措置を講ずる努力が十分になされたこと(解雇回避努力)
③解雇の基準及びその適用(被解雇者の選定)が合理的であること(人選の合理性)
④人員整理の必要性と内容について労働者に対し誠実に説明を行い、かつ十分に協議して納得を得るよう努力を尽くしたこと(労働者に対する説明協議)

また、上記について、採用内定後に新たに判明した事情であることが必要となります。


○入社前研修の拒否

入社前の研修を拒否したことを理由に、採用内定の取消しが認められるでしょうか。
入社前は、いまだ就労が開始されておらず、そもそも研修参加を義務づけることが難しいといえます。
したがって、内定者が任意に参加しなかったことを理由に採用内定を取り消すことはできないと考えられます。

なお、内定者が学業への支障を理由に参加を取りやめる旨申し出たとき、使用者はこれを免除すべき信義則上の義務があると判断した裁判例もあります(宣伝会議事件-東京地判平17.1.28)。



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